どのようにアニメルックのアバターを実装したのか? 2Dアートデザイナーと3Dデザイナーの2人にインタビュー!
こんにちは! ホロアース運営チームです。 今回はホロアース開発スタッフとして働いている2Dアートデザイナー「おぐろさん」と3Dデザイナーの「奈良早也香さん」に話を伺いました! お二人には、アニメ業界の第一線で活躍する坂本勝さんの手掛けたアバターコンセプトデザインをどのようにホロアースに落とし込んでいったのか?その時の苦労や工夫、お互いにどんなコミュニケーションを取り合っているのか? などのお話を語って頂きました! 【インタビュイー紹介】 「おぐろさん」 ポジション:メタバース事業本部 2Dアートデザイナー 入社時期:2022年2月頃 業界歴:約12年 「奈良早也香さん」 ポジション:メタバース事業本部 3Dデザイナー 入社時期:2022年6月頃 業界歴:約13年 ――まずは、お二人がなぜホロアース開発チームに参画しようと思ったのかなどの経歴を教えてください おぐろ さん(以下、おぐろ):僕の場合、元々弊社に勤めていた友人に転職の相談をした際「こういうの作ってるんだけど受けてみない?」と誘われたことがキッカケです。 正直、その時はまだメタバースに対してVRの類似コンテンツくらいの本当にフワッとしたイメージしかなく、アバターの見た目も比較的簡素なものだと思っていたのですが、ホームページに載っているイメージボードを見たりしてセルルックな世界でメタバースを作りを目指しているのだと感じ、それがすごく面白そうだなと感じて応募しました。 また採用ページにも中核メンバー募集中と書いてあって、今まで体験したことない環境でゼロから作れる経験はもうあまりないかなと、そういった所でチャレンジしていきたいという思いもありました。 面接ではプロデューサーから色々と資料を見せてもらいながらホロアースが目指しているものや、やりたいことを聞いて「本当に凄いことをやろうとしている!」と思い前のめりにここで働きたいってなりました。 奈良早也香さん(以下、奈良):私は転職を考えていた時、前職が非常に忙しかったこともあり、モデル制作が既に量産フェーズに入っている安定した環境に進むか悩んでいました。 そんなときにホロアースの話を色々聞いて、新規プロジェクトでゼロから作るということに、今まで自分がやってきたものがどこまで通用するのかという挑戦したいという思いが勝り開発への参画を決めました。 ――挑戦できる会社は他にも多くあったと思うのですが、ホロアースの開発に参加を決めた決め手を教えてください 奈良:ゲーム開発歴が長い会社とかだと、開発フローとか仕様とかの土台がすでにあると思うのですが、ホロアースの開発ではまだそれが整っていなかったので、なにもない状態からホロアースが目指すもの、ホロアースが表現したいアバターをゼロから作り上げることができるところに、やりがいを感じて選びました。 メタバースという経験したことないジャンルやゲーム会社ではないからこそ本当にゼロからの開発に挑戦できそうなところに魅力を感じたっていうのはめちゃめちゃあります。 ――では、お二人がアバター開発で担当している業務や進め方を教えて下さい おぐろ:僕は2Dチームで「衣装とか髪型・顔回り・表情など、アバターの見た目」に関わるところのデザインを担当しています。 奈良:私はアバター3Dチームのリードデザイナーとして、アバターの仕様策定からルック管理までの3Dアバターに関わる全般の担当をしてます。 おぐろ:業務のフローとしては、プロデューサーやプランナーとデザインの方向性にするかを決め、デザインが出来たら、3Dチームに持っていきます。 それに対して3Dチームの方から、アバター開発の仕様に則って実装できる・できないの判断をしてもらいます。 実装できないと判断されたデザインについては、3Dチームからこうすれば実装できるなどのアドバイスを貰ったりしつつ調整し最終的に3Dモデルに出力させていくのが今の流れになっています。 奈良:コンセプトデザインをそのままモデル化するとユーザーが自由にカスタムできるアバターシステムでは組み合わせによって違和感がでてしまうので、そうならないようにめちゃめちゃ細かい仕様を用意して制作しているのでいつもモデルを作るのに苦労しています。 おぐろ:いや、そうですね。3Dチームの方々には多大なご迷惑をおかけしています(笑) でも、それだけ細かくて複雑なレギュレーションに沿ってデザインをしないと、ユーザーが満足できるようなアバタークリエイトの自由度というものは生まれないんだなっていうのは凄く感じましたし、これが本当に良い経験で、作成する際に失敗なども度々ありましたが前向きに捉えています。 奈良:その仕様が守られることでクオリティが高いモデルが出来上がっているんですよ。 それが守られないと不具合が起きたり、変な見た目になったりというのがあるので、細かい仕様の中で良いデザインをしてくれている2Dチームのみなさんは凄いなと思います。 ――おぐろさんがアバターデザインを作るうえで工夫していることや難しさを感じていることはありますか? おぐろ:第一に坂本さんがデザインしてくれたアバターコンセプトデザインがあるので、そこからは大きくずれないようにっていうのは決めていました。 顔とかプロポーションとか髪型とか「きっと坂本さんだったらこうする」というのを常に考えながらホロアースらしさというものも大事にする。 その両立を目指すところに難しさを感じています。 ▲TRIGGER「坂本勝」さんのアバターコンセプトデザイン ――特にどこら辺のデザインが難しいですか? おぐろ:顔回りに1番難しさを感じています。特に目のパーツは、坂本さんに描いていただいたアバターコンセプトや過去に携わっていた作品など色々な資料を参考にしつつ、且つパーツを組み合わせた時に、変にならないか、特定の目や髪の組み合わせでデザインに破綻が起きないかという整合性をあわせるところで特に苦労しています。 ――2Dチームが制作したアバターデザインを3Dモデルにしていくうえで工夫したことや苦労したことを教えてください 奈良:やりたいことや表現したいことが、とにかく多くあったのでリストアップして優先度を付けつつ、量産に影響がある部分から仕様づくりを行ったんですが、この工程で非常に苦労しました。 2Dチームが大事にしたい箇所と3Dチームが大事にしたい箇所が食い合わないときも当然あり、アバター衣装のデザインルール作りにかなり時間をかけました。 衣装のデザインルールというのは、トップス・ボトムスなどの衣装パーツを組み合わせた時に、衣装同士の貫通をなるべく抑えるために、作成範囲を制限するためのルールで様々な制約の中でどこまでデザインの幅を持たせられるかのやりとりを頻繁に行ってました。 ▲トップスもボトムスもなるべくタイトにしたい衣装の時に、貫通を避けながらどれだけタイトに出来るかの検討を重ねた おぐろ:1年半ぐらいずっとやってましたね(笑) ただ、ここの仕様をしっかり決めて制作を行わなければ、どこかで品質が保てなくなっていたと思います。 奈良さんが地盤を固めてくれたお陰で、ちゃんとしたレギュレーションの中でデザインができることに助かっています。 奈良:そう言って頂けて嬉しいです。 その地盤固めの期間を頂けたのが本当にありがたかったなと思います。 ――チーム全体としてスクラップ&ビルドを恐れていない印象がありました。開発初期と今ではかなりモデルが洗練されたように感じます 奈良:実際、ベースデザインが変わったんですよ。最初これで作っていこうってなったベースデザインから、かなりテコ入れが入って衣装のデザインルールも変わりました。 ▲左が開発初期のαモデル、右が現在のモデル おぐろ:僕がチームに参画した段階ではα版のモデルは出来ていて「もう完成してるじゃん!」って思ったんですけど仕様が固まっていく中でα版のモデルでは対応できないことが発覚して、じゃあもう1から作り直そうという感じになったのを覚えています。 奈良:みんなで一緒にいいものを作ろうっていう気合で作り直しましたね。 それがあったお陰で、ユーザーさんからアバターが可愛いと言ってもらえて、やってよかったなと凄く感じました。 おぐろ:ベースデザインが変わるっていうことのヤバさを補足すると、まず、ベースデザインが変わるとモーションも全部変えないといけないんです。 作っていたモーションとかも全部作り直すと、ゲーム性にも影響したりして、本当にゼロからのスタートになるみたいな感じですよね。 ベースデザインが変わるのは「マジで!?」って思う開発の人間は多いと思います。 奈良:モーション班にもびっくりされましたね(笑) おぐろ:衣装なり髪型なり、色々なところに対応できるようなデザイン、モデルじゃないと駄目なんだと、アバターシステムの難しさを感じましたね。 奈良:当社に所属しているVTuberタレントの3Dモデルのクオリティが世間に受け入れられているところを、アバターシステムのベンチマークとして、そこのクオリティラインは達成しないといけないという高い目標が最初から設定されていました。 そこを達成していくために、ベースデザインの変更は必要なことだったと思います。 ――実際去年の12月に三角から人型アバターとして出して、ユーザーさんからの反響とかをみていかがでしたか? おぐろ:まず1番は、やっと皆様にお披露目することが出来てホッとしています。 ユーザーさんからの声を見ていると、「可愛い」とか「クオリティが高い」とか言ってもらえてチームの苦労や努力が報われたと思い嬉しい気持ちです。 しかしそれ以上に期待値をもっと超えていかないといけないっていうのは感じました。 「可愛い」という感想と同時に「こんなことできるんだ!すごい!」みたいな、驚きの声ももっと聞きたいなという気持ちがあります。 奈良:私は、アバターが「可愛い」って言ってもらえたことが、すごく嬉しくてモチベーションに繋がっています。 キャラクターデザインをしてくれた坂本さんもアバターカスタマイズを遊んで下さって、坂本さんが実際に描かれるような表情でスクショを撮ってSNSに投稿して頂いていました。 表情が動いている途中で止めても可愛く見えるように、こだわりを持って作ったので、坂本さんの投稿画像が表情モーションの中間部分だったので、ちゃんと可愛いと思ってもらえてるんだなと、こだわりが伝わって非常に嬉しかったです。 おぐろさんも仰っていたように、このレベルで止まるのではなく、他社さんのコンテンツよりもセルルックで1歩前に出られるようなところを目指したいなと思いました。 ▲モーションの途中で撮影しても可愛く見えるようにこだわった おぐろ:ホロアースをしっかりとしたジャパンアニメルックのような画にしていきたいというプロデューサーの提示する大きなコンセプトがチーム全体で目指している所ではあります。 奈良:サンドボックスでも今後、昼夜の概念が入ってくると思うのですが、どんな時間帯でも綺麗で映える画作りを実現していきたく思っています。 ――アニメルックの世界に自分自身が入っていける、没頭できるというのは大事ですよね。 おぐろ:自分は没頭してアニメ作品を観ていると「この世界に、このワンシーンに自分が一人のキャラクターとして存在していたらどうなるんだろう?」って考えてしまうんですよね。 そういった没入感をホロアースでも感じれるようにしていきたいとも思っています。 奈良:メタバースの醍醐味って感じがしますよね。そこの空間で生活しているとちゃんと体感してもらえる没入感を目指すっていうのは本当にやりたいです。 ▲「オルタナティブ・シティ」にあるファッションショップ「ALTERMODE」の壁面に映るキャラクターはおぐろさんが制作 ――他の一般的なメタバースとは違って、アニメルックの世界観に没入していくことを目指しているホロアースにおいて、亜人や獣人などの現実に存在していないものに実在感を持たせていかなくてはいけませんよね。 これは結構難しいチャレンジだと思うのですが、現時点でどういったものを考えていますか? おぐろ:そうですね。亜人・獣人表現は、開発チームとしてもやりたいという思いは強いので、しっかり設定を作って出してあげたいですね。 他種族でも違和感なくファッションを楽しめるように、悪魔だったらゴスロリ系なのかなとか、そういったところもしっかり描いていきたいなと思っています。 他にも、タレントさんにも色々な種族の方が沢山いらっしゃるので、そこ含めて一緒に世界観に入り込めるようにしていきたいです。 「あの憧れのタレントさんと同じ種族になれる!」とかも感じて貰えたら嬉しいです。 ――ファンタジー世界で他種族になれるゲームというのは沢山ありますが、ファッションとか日常を楽しめるみたいな要素は、他ゲームではなかったことかもしれませんね。 おぐろ:自分も描きたいところではあったので、プロデューサーに色々デザイン案を描いて投げているところです。 ▲WEBマンガ「Holoearth Chronicles Side:E ヤマト神想怪異譚」にて、おぐろさんが制作したキャラクターデザイン案 本作のように他種族が違和感なく日常を楽しめるようなデザインをホロアースでも実装できるか議論を重ねている 奈良:おぐろさんとプロデューサーで密にやり取りされてますよね。 おぐろ:ホロアースみたいなサービスって新規性が高くて、ゼロから作っていかなくてはいけないという面で、常に連携を取っていかないと、どこかしらで設定に穴が空いたりとかするので、僕だけではなく、3Dチーム含めて、プロジェクト全体がプロデューサーと密にやり取りをしっかりやっているのが好きですね。 奈良:気軽に話しかけに行きやすい環境っていうのがいいですよね。 ――ありがとうございます。アバターのデザインと開発っていうところを2D3Dのデザインチームにほとんど主導してもらっているじゃないですか。 これまでの開発現場ではあまりみたことないような環境ですよね。 奈良:かなり任せてもらってますね。 おぐろ:僕も経験がないです(笑) 奈良:任せて貰えたことで、こうしたらモデルのシルエットが綺麗になるとか、ルック的にいいんじゃないかなど、2D・3Dデザイナーの目線から、仕様に盛り込むことができましたね。 おぐろ:色々な自分発信の提案がこんなにフラットにできて、それが採用されたりする現場もあまり見たことがありませんね。ここまでだったらこのクオリティで作れるみたいな形で、自分たちで締め切りや全体のバランスを考え設定していくことになるので、自分達で提案した以上、それはしっかりと守らないといけない責任が生まれて業務は増えてしまうのですが、それも全然楽しいです。 奈良:一時的に忙しい時期はありましたが、締め切りまでに作らないといけないクオリティを自分たちで宣言しているので、全員が最後までやりきろうって気持ちが強いままアバターの初期リリースを完了することができました。 ――最後に、ユーザーさんに向けてメッセージをお願いします! おぐろ:ホロアースは色々な可能性を秘めているプロジェクトだと思っています。 しかし作っていく中でご迷惑をお掛けしたり、お待たせしてしまうこともあるかと思いますが、その分感動や驚きなど皆様の期待値を超えた様々なアップデートをしていけるようチームみんなで奮闘していきますので、温かく見守っていただければ幸いです。 奈良:いろんなアバターカスタマイズを皆さんに楽しんでいただけるように、細かいところまでこだわったアバター制作をしていきたいと思います。 ホロアースと一緒にアバターもまだまだアップデートしていきますので、ぜひみなさんもホロアースでの分身を作り、この世界を楽しんでください! ※本インタビューで記載されている未実装の機能や展望について言及されている内容は、正式に実装されることを必ずしも保証するものではございませんが、開発チーム内での実現可否の検証・議論は行われているものとなります。